北海道東海大学で行われた実験の概要(2004年11月19日)
目的:
北海道東海大学で松下電器製「ΣBook」を使用した講義が行われているという情報を得、電子書籍を読む
以外の用途に向けての実態を把握すると共に新たな使用シーンに向けた要求・ヒントをを得ること。
実験の背景:
同実験は、平成15年度経済産業省地域新規産業創造技術開発費補助金「マルチモーダルインターフエ-ス型
電子教材の研究開発」の一環。
株式会社ハドソンとがツールとハードウエアを提供、北海道東海大学にて実使用するかたちで行われている
平成16年下期から本格的に使用が開始し、ΣBookを100台用意した。
実験現場概況:
・訪問した教室の出席者14名(女性1名)
・講義開始時に講義内容が事前にインストールされたΣBookが学生に配布される。講義終了後回収される。
・講義コンテンツは12ページの資料で写真が10枚ほど。講義は馬渕教授が板書きしていくのを学生が紙
ノートを取る、という一般的なスタイルで進められていた。
・教授の行動では特記すべき点はあまりなく、ページを進むときに「右矢印を押して」というハードウエア操作
について声をかける程度であった。
学生の同実験に関する感想:
・基本的にディスプレイ部に関する指摘が多く、やや暗く、文字も見にくい、などの感想があり、カラー表示や
描画速度向上などに関する要望が多い。
・さらにペン入力、ネット接続、動画・音声機能などが必要と感じたものに挙げられた。
ソフトウエア性能については、既存のPCやPDAに相当する機能の提供を求める声が多かった。
また教科書としては良いが、ノートも必要など筆記性そのものの価値に関するコメントも多かった。
馬渕教授の同実験に対する感想:
・ハードウエア性能に関しては操作性は全く問題がないものの、写真や図表を用いるにはカラー表示は必要。
また紙プリント使用と比べて視線を合わせるチャンスが少なくなったとの実感がある。
本格導入のためには強制的に使わせないと現実的には無理で現時点では「興味のある人は」と促す程度では
広まらないだろうとのこと。コスト面でテキスト用に大量のコピー、プリントが不要となってコスト効果が大きい。
PCでも講義は可能だが、PCを全員に購入させることは現実的ではない。総じて電子ペーパーデバイスは
時間とコストの節約になりうるとの見解を示した。
調査訪問WG-2メンバー所感まとめ:
・ΣBookの使用には、教科書としてあるいは副教材としてほとんど違和感なく使っているように見えた。
同大学での使われ方は、紙の教科書の代替品の域は出ておらず、電子教科書を使っているという雰囲気は得られない。
・教育現場への本格的導入には、強制的に導入させるための仕組みがインフラも含めて必要。

参考文献:平成16年度拡大する電子ペーパー市場と機械産業の取り組みについての動向 調査研究報告書