自発分極を有し、かつ外部電場の印加でその自発分極の向きが反転する液晶。特定の分子構造を持つカイラルスメクティック液晶が強誘電性を示し、代表例はカイラルスメクティックC(Sc)液晶である。液晶が強誘電性を発現するのに必要な条件を要約すると、次のようになる。
(1)傾斜角(チルト角)を持つスメクティック液晶相を示す。
(2)液晶分子は末端部に不斉炭素を含むカイラル分子から成る。ただしラセミ体を形成しないこと。
(3)液晶分子は分子長軸に垂直方向の双極子モーメントを有する。[1]
強誘電性液晶は液晶材料の中でも比較的規則正しく液晶分子が並んでいて、電場印加時に、高速光スイッチング現象(通常1msを切る)やメモリ現象(電場を切っても分子配向が維持される)などの電気光学現象が見られ、これらを強誘電性電気光学効果と呼ぶ。電場無印加時の初期分子配列の相違から非メモリ(単安定性)型とメモリ(双安定性)型に大別される。
強誘電性液晶の双安定性を表示に応用する場合、液晶化合物(一般には混合物として使用される)のチルト角の大きさによって、複屈折型と、二色性色素を添加するゲスト・ホスト型の二通りに分類される。[2]
06年、シチズン時計が強誘電液晶を使ったメモリー性パネルの開発を発表している。
参考文献:[1]液晶の基礎と応用、松本正一・角田市良、工業調査会 [2]液晶入門、中田一郎・堀文一・向尾昭夫、幸書房