東京電機大学での実証実験
目的:
従来紙の教科書で行われている授業を、電子書籍を用いた教科書に置き換え、紙の教科書と比較して電子化された
教科書の特性を見いだすことを目的とした実験を行った。
実験条件:
従来紙で行われているコミュニケーションを、強制的に電子ペーパーに置き換えてみるとどうなるかを、問題意識として
7名程度の受講者を想定したゼミ形式の授業を通じて、ペーパーライクディスプレイの教育利用を実践する。
電子ペーパーのモノクロ、リライタブルという表示特性だけを用いた検証実験でもある。
実験概要:
1.作業補助学生が教科書本文をLIBRIe用に変換し、被験者全員に配布する。
2.説明担当学生がLIBRIeで教科書本文を読み、レジュメ(資料)を作成する。
レジュメのファイル(MS-Word)を作業補助学生に送る。
3.作業補助学生がレジュメのデータをLIBRIe用に変換し、配布用メモリースティックに記録。
4.授業に先立ち、レジュメのデータを各自がLIBRIeにコピーする。
説明担当学生が教科書本文とレジュメを読みながらゼミを行う。教科書本文を読み、詳しい説明などは
作成してきたレジュメで補足説明を加え、ディスカッションを行う。
5.以上の授業内容を約90分間、12週にわたって行う。
最後の週には、LIBRIeのみ参照可の筆記試験を行う。
6.紙の本とどのよう違いが見られたのか、事前調査に基づいた、フォーカスグループインタビューを行う。
ゼミの実施概要:
被験者は東京電機大学理工学部情報社会学科3年生7名、全員出席
11週に渡ってゼミ形式の授業を行い、6週目に見学会。10週目にインタビュー、12週目に試験を行った。
ゼミの教科書として使用したのは、斉藤嘉博著、「メディアの技術史」東京電機大学出版局である。
インタビュー:
紙の教科書と比べて満足な点は、「薄い」、「小さい」、「何冊分も持ち歩けること」、不満足な点は、「書き込みが
できない」、「目次がない」「目的の位置までの移動が大変」など。操作性は反応速度が遅い。LIBRIeの直して欲しい点は
「メモ帳機能が欲しい」、「カラー化」「反応速度の向上」「画面の大きさ」という回答であった。特に紙の教科書で出来る
ことがLIBRIeでできないことがあげられた。
考察:
LIBRIeを教科書として用いるときにページの概念がないため生徒に読んで欲しいページの位置を指定することができない
またコンテンツの離れた場所を相互に参照する機能がない。授業中に離れた箇所を指示して読ませる目的では
利用できない。さらにLIBRIeで問題になるのは、マーカーや書き込み機能がないということである。マーカーを引き、書き
込みを行うことで能動的に学んでいくことが求められる。必要不可欠な機能である。

参考文献:平成17年度拡大する電子ペーパー市場と機械産業の取り組みについての動向 調査研究報告書